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口琴
第11章 知られざる過去
あの梨絵が、虐待?…まさか…。

二人は、聖の言葉に耳を疑った。

「…おいおい、それは穏やかじゃないな…。虐待なら、その事実関係をはっきりさせて、警察や児相で、然るべき対応をして貰わなねばならんし、養子うんぬんについては父さんもよく分からんが、未成年の養子縁組は、本人の意思は関係ないらしい。ましてや、他人の我々には何もできないよ…」

「…わ…私も、そう思うわ…」

朋香が、曇りゆく聖の顔色を窺いながらも、惣一の言葉に相槌を打つ。

「どちらにしても、私達が首を突っ込める話では無さそうだ。悪い事は言わん。家に帰した方がいい。
それがダメなら、警察に行って保護して貰うっていう方法もある。蕾ちゃん…だっけ?聖が保護したってことで…な?聖…」

惣一が、言っている意味を解らない聖ではなかったが、自分を子供扱いし、理詰めで丸め込もうとしていることが惣一の言葉の端々に見え、さも気持ちを汲んでやったかのような大人特有の不遜な色を孕んでいる言い方が、聖の怒りの琴線に触れた。

「…警察なんかに蕾を守れっこない!子供の言うことなんか、どうせ聞いてくれないよ!今の父さん達みたいに!家に連れ戻されたら…また酷い目に遭わされて…。それに…もう、逢えなくなる…。もういい!父さん達には頼まない!」

聖は、興奮して立ち上がり、ポケットにハーモニカを突っ込んだ。

それから部屋へ駆け上がり、ありったけの貯金をポケットに詰め込む。

「蕾、来いよ!」

「聖君…?」

蕾は聖に腕を掴まれ、玄関へと連れ出された。

「聖?何やってんの?ほうら、ねぇ、落ち着いて?」

朋香が、できるだけ聖を刺激しないように、柔らかな口調で制する。

惣一は無言で腕を組み、座ったままだ。

聖も無言のまま靴を履く。

すると、蕾のサンダルが片方しかない事に気付いた。そうだ、川に流されたんだ。

聖は下駄箱の奥から、適当に自分の履き物を引っ張り出して履かせると、無言のまま背を向ける父と、おろおろしながら、自分と父を交互に見る母を睨み付け、

「俺が、守るから」

そう言い残して、玄関を出た。

「聖!」

朋香が追いかけようとしたが、バタン!とドアを閉める。

蕾は聖の衝動的な行動に狼狽し、これからどうなるのかも分からぬまま、自転車に乗せられた。

「聖君…」

「………」

聖は押し黙ったまま、自転車を走らせた。
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