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イカせ屋稼業
第3章 そのさん
『おはようござまーす……………』

事務所に入ると、
拓矢の背中が見えてドキッとする。


拓矢は振り返り『今日はよろしく〜』
とクールだ。
いつもと同じ、黒いタートルネックに黒いデニム姿で金髪を一つに束ねている。

『ああ、よろしくな』
クールさにホッとして肩の力が適度に抜けた。


甲斐が2人をバンワゴンで都内某所(ホテルの一室)まで運ぶ。


『まぁ適当に、且つエロくなるように頑張れ』
運転しながら甲斐が2人に声を掛ける。


『はーい』
『頑張ります』
2人は同時に返事をした。
左座席に座っていた拓矢が、
ごそごそと手を伸ばして右座席の翔汰の背中に触れた。。
(あんだよ?)

(いや演出しといたほうが本番入りやすいかなと…)
(今まだ良いだろーが)

(照れんなって…)


車の窓にはカーテンが付いている。
芸能関係者にはありがちな社用車。
朝日がフロントガラスから入り拓矢の端正な美しい顔を照らす。


翔汰はドキドキしてきた。(何だ?
何のドキドキだよ俺…)


近場に撮影場所があった。15分ほどでホテルの駐車場へと到着する。

ここも普段から撮影用によく利用しているホテルだ。
制作会社と契約しているホテルが数ヶ所あり、
もちろん売り上げからバックマージンがホテルに入るという利点がある。

ホテルスタッフにも〔口止め料金〕として、
チップを渡すこともあった。

高級の部類に入るホテル〔奏―かなで―〕。
3人はエレベーターに乗り、18階へと向かう。
廊下にもふわふわした絨毯が敷き詰められている。
もちろん物音一つしない。
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