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イカせ屋稼業
第10章 〜番外編〜
赤いレンガで出来た門を潜る。
「おはよー」
「はよ〜〜〜」
ブレザーを着た同級生たちが、
それぞれに話しながら校舎へ向かう。
曽我拓矢(16)は、
肩にかけた学校指定バッグを揺らしてゆっくりと歩く。
「たっく!おっはよ!」
後ろから亜美【あみ】の声がして、
背中をポンと叩かれた。
ストレートのロングヘアが初夏の風にさらさらと靡いている。
「………はよ」
拓矢はさして興味もなく、亜美に返した。
「ねぇ、期末の範囲聞いたぁ?
広すぎない?」
亜美は拓矢の素っ気なさを気に留めずに、隣を歩き始める。
「………広いね」
拓矢は頬まである前髪を右手で掻き分けた。
―――Hしたのがまずかったかな。
きゃあきゃあと甲高い声で話す亜美を尻目に、そう思う。
――5月末。
私立慶能学園高校2年。
グレー色のシャツの腕を捲りすたすた歩く。
ヒョロっと背が高い拓矢は目立つ存在だ。
中学からエスカレーター式だから、
ほとんどが見知った顔。
変わらない毎日。
「ねぇ〜〜〜?
聞いてるのー、拓矢ぁ〜」
亜美が腕に絡みつくように抱きついてくる。
ふわりと花の香りがした。
瞬間、
吐き気に似た不快感が胃を重くした。
「暑いから、離れて」
パシッと亜美を叩く。