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イカせ屋稼業
第11章 そのじゅう
同時刻、
アダルト俳優事務所・〔nine〕では――――




『何だと?
〔怪我人コスプレ〕で撮影?』KANAMEが眉間にシワを寄せた。


スキンヘッドの男が腕を組み、パイプ椅子に仰け反るようにして座っている。
『そうらしいぞ』と頷く。


『マジかよ?
せっかくユリカに顔傷つけさせたのに………もっと派手にすりゃ良かったな。
傷害届け出そうと脅すわ、奴ら天然?分かってやってんのか?』

KANAMEは親指の爪を咬んだ。
キツい目付きに、炎が宿る。

『俺が、トップにしなきゃならないんだよ…………
この〔nine〕を』
KANAMEは渋面でそう呟いた………………………………………………






____
甲斐が先ほど思い出した出来事。
それは、拓矢に椅子を投げつけた女優•ユリカの所属事務所が〔nine〕であり、「傷害罪で届けを出すぞ」と事務所へ圧力をかけたことだった……………………………





『―――ここだ。ちょっと特殊なホテルだよ』
甲斐がワゴンを停めたのは、
ラブホテルの一角。


撮影会社が共同で借り入れている場所の一つだ。


ふたりは降りて、
甲斐に誘導され狭い廊下を進む。


『もしかして、ここって……』翔汰が口を開いた。


『よく分かったな?
SM専用ホテルだよ』
甲斐が答えた。


狭い廊下に並ぶ、
鉄の扉。


声や音は聞こえないが、
普通のラブホテルとは雰囲気が違う。

『せっかく〔怪我人コスプレ〕だ。
リキ入れてんだぞ?』
甲斐が奥にある重そうな扉にカードを挿入した。


カチャリと開錠音がして、甲斐が扉を引く。
『…………ぃしょっと!』

『うわっ…』
拓矢は思わず声をあげた。

鉄で出来ているベッド。
四つ隅には手足拘束用のチェーンがある。

吊し上げるためのレーンが天井から下がっている。


他にはムチ、蝋燭………
縄などが備え付けてある。

狭く暗い室内。

『コスプレつーか、
ホントの怪我人なんですけどね俺……』
拓矢が力なく笑う。
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