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イカせ屋稼業
第14章 そのじゅうに
___『これだな?』
オヤジさんは一枚の写真を差し出した。


『ああ、これだ。
じゃ』
奪うように手にすると、
KANAMEは〔はとや〕を出た。



『いつでも帰ってきてくれよ~』
背中にオヤジさんの声が届いたが、
振り返らずにずんずん歩く。



歌舞伎町は当たり前だが夜が勝負だ。

朝方勤務を終えたホストやらキャバクラ嬢、
オカマや酔客たちが〔夕飯〕として利用するのが〔はとや〕だった。


10歳くらいのとき、
着飾った酒くさい男女を見て思った。

「こうはなりたくない」と。

その向こうにある、
暴力と権力を、KANAMEは齢10にして欲した。



人を虐げ、
使えるだけ使って捨ててやる。



自分が母親からされたからというバカな理由じゃない。

使われる側になりなくなかった。

世の中、金が全てだ。

人間はひと皮剥がせば、
強欲の塊だ。

謙虚・誠実・人の温かさ…………

美徳とされるそれらは、
1銭にもならない。


あっても利用されるだけ。


KANAMEは、
17歳の時にはホストクラブで働いていた。

金がある程度出来たから〔はとや〕を出た。


そして、
師橋の名を聞いて近づき、慕うようになった。

その間もずっとホストクラブで働いていた。



金は人を呼ぶ。

酒は人を麻痺させ、
女は万札を見ると股を開く。
KANAMEの客で借金苦になり自殺した女もいたが、全く心は波立たなかった。
バカな女だ。
ホストクラブという場所自体が虚構なのに。
入れ込むならば、最初から近寄るな。


その繰り返しでここまで来た。

師橋に目をかけられ、
〔nine〕を実質上任されるようになった。

師橋はKANAMEの理想だ。


気に入らないヤツは、直ぐ海に沈める。

冷たい?人間じゃない?………違う。現実的なだけだ。

だから、正義漢を装って理想論を振りかざす翔汰ってヤツには虫酸が走る。

甘い戯れ言でしかない。





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