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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第4章 第二話【花影】-其の壱-

「全っく、しょうのねえ奴だな。頑固なところまで、あいつにそっくりなんだから」
父の言う「あいつ」とは、むろん母お絹を指す。
「あいつもとことんお人好しのくせに、一度言い出したらテコでも動かねえ頑固なところがあったもんな」
その台詞はお彩にというよりは、むしろ伊八自身に自分が語っているように見える。
父の眼は遠かった。お絹が突然逝ってから三年の月日が経っていたけれど、母は今でも父の心の中で生き続けているのだ。
お絹は、母は幸せな女(ひと)だとこんな時、お彩は心から思わずにはおれない。女としてここまで愛される男にめぐり逢えることは稀だろう。だとすれば、父にめぐり逢えた母はたとえ短い一生ではあっても、けして不幸ばかりではなかったと思うのだった。
―たとえ小さくても良い。心に自分だけの花を咲かせるんだよ。
父の言う「あいつ」とは、むろん母お絹を指す。
「あいつもとことんお人好しのくせに、一度言い出したらテコでも動かねえ頑固なところがあったもんな」
その台詞はお彩にというよりは、むしろ伊八自身に自分が語っているように見える。
父の眼は遠かった。お絹が突然逝ってから三年の月日が経っていたけれど、母は今でも父の心の中で生き続けているのだ。
お絹は、母は幸せな女(ひと)だとこんな時、お彩は心から思わずにはおれない。女としてここまで愛される男にめぐり逢えることは稀だろう。だとすれば、父にめぐり逢えた母はたとえ短い一生ではあっても、けして不幸ばかりではなかったと思うのだった。
―たとえ小さくても良い。心に自分だけの花を咲かせるんだよ。

