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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第4章 第二話【花影】-其の壱-

たとえ小さな一膳飯屋の主とはいえ、娘の奉公先の主人である喜六郎に対して、伊八は気を遣っているようであった。伊八が無造作に差し出したのは竹の皮に包まれた随明寺の桜餅である。
「ありがとう、おとっつぁん」
お彩はまた、不覚にも涙が出そうになるのを懸命に耐えた。小さな包みに、父の想いと心が詰まっているように思え、それを押し頂くように受け取った。今度こそ父と懐かしい我が家に背を向け、お彩は足早に歩いた。ゆっくりと歩けば、その分だけ、帰りたくないという気持ちが強くなる。
「ありがとう、おとっつぁん」
お彩はまた、不覚にも涙が出そうになるのを懸命に耐えた。小さな包みに、父の想いと心が詰まっているように思え、それを押し頂くように受け取った。今度こそ父と懐かしい我が家に背を向け、お彩は足早に歩いた。ゆっくりと歩けば、その分だけ、帰りたくないという気持ちが強くなる。

