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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第4章 第二話【花影】-其の壱-

できることなら、このままずっと父とここで暮らしたかった。昔のように父の側で父に甘えて過ごすことができたなら。もとより、お彩が望めば、父は歓んでお彩を迎えてくれるに相違ない。だが、お彩は自分からこの長屋を出ていった身であった。たとえその理由が何であるにしろ、自ら家を出たという事実は変わらない。
ならば、父への思慕が恋ではないと判ったからといって、ただそれだけの理由で家に戻るというのも随分と身勝手な話だろう。十七といえば、一人前、もう人の女房になって子の母として立派にやっている女たちも世間には大勢いる。そんな中で自分だけがいつまでも我が儘を言って父の優しさに甘えてばかりいることは許されるものではない。
自分から家を出るということは、我が身一人できちんと生きてゆく、自分の身の始末は自分でつけるということなのだ。父に詫びたからと言って、家を出たというその事実が容易く消えるものではない。
ならば、父への思慕が恋ではないと判ったからといって、ただそれだけの理由で家に戻るというのも随分と身勝手な話だろう。十七といえば、一人前、もう人の女房になって子の母として立派にやっている女たちも世間には大勢いる。そんな中で自分だけがいつまでも我が儘を言って父の優しさに甘えてばかりいることは許されるものではない。
自分から家を出るということは、我が身一人できちんと生きてゆく、自分の身の始末は自分でつけるということなのだ。父に詫びたからと言って、家を出たというその事実が容易く消えるものではない。

