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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第5章 第二話・其の弐

憤りに震えていたお彩は喜六郎の声に我に返った。喜六郎がそんな風に自分を見てくれていたなんて、これまでは知らなかった。
小巻の酷い罵りの言葉を耳にした直後だけに、お彩の心に温かなものが流れた。
だが、小巻の方は逆に更に苛立ちを募らせたようだ。どうやら、この我がままな娘は自分ほどの女はいないと自惚れているらしい。
そして、父親がお彩を庇えば庇うほど、ムキになるようだった。
「何よ、それ。それじゃあ、おとっつぁんは、私があの子よりも劣るっていうの?」
激する一方の小巻に喜六郎が言い諭す。
「どっちが劣るとか、そういう問題じゃねえだろう。女は眉目より心映えが大事だと俺はお前に言いてえのさ。偉平衛さんだって、今はお前にぞっこんだが、これから先何年、いや、何十年も連れ添やあ、いつか他所(よそ)を向くことだってあるかしれねえ。小巻、容色はいくら美しくとも、いつかは衰える。そうなったときこそ、人間の本当の価値が問われるのさ」
小巻の酷い罵りの言葉を耳にした直後だけに、お彩の心に温かなものが流れた。
だが、小巻の方は逆に更に苛立ちを募らせたようだ。どうやら、この我がままな娘は自分ほどの女はいないと自惚れているらしい。
そして、父親がお彩を庇えば庇うほど、ムキになるようだった。
「何よ、それ。それじゃあ、おとっつぁんは、私があの子よりも劣るっていうの?」
激する一方の小巻に喜六郎が言い諭す。
「どっちが劣るとか、そういう問題じゃねえだろう。女は眉目より心映えが大事だと俺はお前に言いてえのさ。偉平衛さんだって、今はお前にぞっこんだが、これから先何年、いや、何十年も連れ添やあ、いつか他所(よそ)を向くことだってあるかしれねえ。小巻、容色はいくら美しくとも、いつかは衰える。そうなったときこそ、人間の本当の価値が問われるのさ」

