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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第5章 第二話・其の弐

お彩は重い吐息を洩らし、ゆっくりと家路を辿り始めた。待つ人とておらぬ、ひっそりとした長屋に向かって。
翌日の昼時、店はほぼ満員状態で、お彩は一人であっちこっちへと忙しく立ち働いていた。職人や人足たちが声高に話しながら、それでも忙しなく飯をかき込んでいる姿が狭い店の中で見られる。
「お彩ちゃん」
そんな最中、お彩は突如として名を呼ばれ、脚を止めた。
振り向くと、見慣れた顔があった。馴染み客の伊勢次である。伊勢次は左官をしているが、丸顔と二十一歳という年齢には見えない童顔が示すとおり、気の好い若者であった。お彩は丁度、伊勢次の注文した卵丼を彼の席に運んでゆくところであった。
翌日の昼時、店はほぼ満員状態で、お彩は一人であっちこっちへと忙しく立ち働いていた。職人や人足たちが声高に話しながら、それでも忙しなく飯をかき込んでいる姿が狭い店の中で見られる。
「お彩ちゃん」
そんな最中、お彩は突如として名を呼ばれ、脚を止めた。
振り向くと、見慣れた顔があった。馴染み客の伊勢次である。伊勢次は左官をしているが、丸顔と二十一歳という年齢には見えない童顔が示すとおり、気の好い若者であった。お彩は丁度、伊勢次の注文した卵丼を彼の席に運んでゆくところであった。

