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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第6章 其の参

折しも太陽が今日という一日に別離を告げ、地平の彼方に消えゆこうとしていた。空が次第に色を変え、辺りの景色が蜜色から菫色へと変化してゆく光に染まっている。徐々に暗さを増してゆく川の水面に、薄紅色のたっぷりとした花の影が映っていた。
お彩はうつむいて、ぼんやりと水面を眺めていた。時折、風もないのにひらひらと花片が舞い上がり、水面に落ちた桜貝のような花びらたちは、一枚の美しい織布に散った模様のようにも見える。しかし、日没によって、直にそんな美しい眺めも気紛れな夜の色に隠されてしまった。
かすかな溜め息が彼女の口から洩れる。
その時、突如として後ろから肩に置かれた手があった。愕いたことに、その指の感触をお彩は憶えていた。半年ほど前の晩秋のある日、驟雨に遭って、「花がすみ」に飛び込んできたあの男の指の温もりだった。
お彩はうつむいて、ぼんやりと水面を眺めていた。時折、風もないのにひらひらと花片が舞い上がり、水面に落ちた桜貝のような花びらたちは、一枚の美しい織布に散った模様のようにも見える。しかし、日没によって、直にそんな美しい眺めも気紛れな夜の色に隠されてしまった。
かすかな溜め息が彼女の口から洩れる。
その時、突如として後ろから肩に置かれた手があった。愕いたことに、その指の感触をお彩は憶えていた。半年ほど前の晩秋のある日、驟雨に遭って、「花がすみ」に飛び込んできたあの男の指の温もりだった。

