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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第7章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の壱

―其の壱―
ふいに傍らを心地よい風が吹き抜けてゆき、お彩は深呼吸して思い切り息を吸い込んだ。眼裏では、まだ色とりどりの眼にも鮮やかな風車が回っている。様々な千代紙を貼った風車が藁束に幾本も挿してあり、初夏の風を受けて思い思いに回る。その周囲を幼い子どもたちが取り囲み、無邪気な歓声を上げる。 いつもどおりの賑やかな縁日市の光景であった。お彩はたった今、随明寺の縁日市を覗いてきたばかりだ。江戸の町外れにある黄檗宗の名刹であり、開基の浄徳大和尚の月命日には広い境内にはあらゆる露店が所狭しと並び、大勢の参詣客で賑わうのが常であった。
境内には山門を入ってすぐに金堂があり、三重ノ塔をを初め、浄徳大和尚を祀る奥ノ院や絵馬堂といった諸伽藍が点在している。
ふいに傍らを心地よい風が吹き抜けてゆき、お彩は深呼吸して思い切り息を吸い込んだ。眼裏では、まだ色とりどりの眼にも鮮やかな風車が回っている。様々な千代紙を貼った風車が藁束に幾本も挿してあり、初夏の風を受けて思い思いに回る。その周囲を幼い子どもたちが取り囲み、無邪気な歓声を上げる。 いつもどおりの賑やかな縁日市の光景であった。お彩はたった今、随明寺の縁日市を覗いてきたばかりだ。江戸の町外れにある黄檗宗の名刹であり、開基の浄徳大和尚の月命日には広い境内にはあらゆる露店が所狭しと並び、大勢の参詣客で賑わうのが常であった。
境内には山門を入ってすぐに金堂があり、三重ノ塔をを初め、浄徳大和尚を祀る奥ノ院や絵馬堂といった諸伽藍が点在している。

