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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第7章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の壱

「そうだな。お縞はよおく言ってたよ。あの時、お彩ちゃんをあんたたちから盗むような真似をしなくて本当に良かったって。そんなことをしたら、それこそ死んだ吉之助に恨まれる羽目になっていたとね。まさか、お絹さんがこんなに早くに亡くなるとは俺は思ってもみなかったが、お絹さんは伊八さんのような男にめぐり逢えて、幸せだったんだろうな」
男が嘆息して言う。
お彩にはすべてが謎だらけの会話であった。二人の話の中には知らない人間の名が次々に出てくる。「お縞」、「吉之助」―、お彩にとっては初めて聞く名前であったが、父には馴染みのあるものらしい。唯一、想像できたのは、「お縞」という女が父と話している男の女房であったに相違ないということくらいのものだ。愕くべきことに、「お縞」はお彩の伯母になるという。
彦七というのが「お縞」の良人だと見当がつくが、その彦七によれば、お縞はかつてお彩をさらおうとしたことがあるらしかった。
男が嘆息して言う。
お彩にはすべてが謎だらけの会話であった。二人の話の中には知らない人間の名が次々に出てくる。「お縞」、「吉之助」―、お彩にとっては初めて聞く名前であったが、父には馴染みのあるものらしい。唯一、想像できたのは、「お縞」という女が父と話している男の女房であったに相違ないということくらいのものだ。愕くべきことに、「お縞」はお彩の伯母になるという。
彦七というのが「お縞」の良人だと見当がつくが、その彦七によれば、お縞はかつてお彩をさらおうとしたことがあるらしかった。

