この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第7章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の壱

子がおらぬ彦七は禄助という腕の良い若い者を養子に迎えていた。宮七の跡目はその禄助に継がせるつもりで、そのことは亡きお縞も承知していたという。今回は禄助に留守を任せ、のんびりと江戸見物でもする気でいた。今更幸せに暮らしているはずの伊八・お絹夫婦の前に現れるつもりは初めはなかった。
しかし、亡きお縞が最期まで案じ続け、うわ言で呼んでいた姪―お彩のことを思うと、どうにも伊八夫婦に逢わずには帰れそうになかった。それゆえ、お彩には伊八の昔の友人だという触れ込みで甚平店を訪ねようと思い立ったのであった。伊八にも語ったように、せめて、お彩が健やかに生い立ち、一人前の娘になった姿を見ておきたいと思ったのである。結果として、そのことがお彩を運命を大きく狂わせることになるとは彦七は考えもしなかった。
しかし、亡きお縞が最期まで案じ続け、うわ言で呼んでいた姪―お彩のことを思うと、どうにも伊八夫婦に逢わずには帰れそうになかった。それゆえ、お彩には伊八の昔の友人だという触れ込みで甚平店を訪ねようと思い立ったのであった。伊八にも語ったように、せめて、お彩が健やかに生い立ち、一人前の娘になった姿を見ておきたいと思ったのである。結果として、そのことがお彩を運命を大きく狂わせることになるとは彦七は考えもしなかった。

