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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第7章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の壱

お彩が十四の年、お絹が急な病で亡くなった。それ以後、何故か、あれほど伊八を慕っていたお彩が伊八を避けるようになった。乱暴な物言いをしたり、かと思えば、急にむっつりと黙り込んだりする。伊八は初めは思いもかけぬ娘の変化におおいに戸惑ったものの、次第にそれが母親を喪った娘の心の痛みゆえだと理解するようになった。そう思ってからは、無理にお彩の心に踏み込むようなことはせず、遠くから見守るだけにとどめた。
突然の家出を許し、強引に連れ戻すこともしなかったのは、そのせいもある。
だが。
この時、伊八の胸にふと疑念が湧いた。お彩の変化には、もしや他に原因があったのではないか。もし、それが己れの出生の誕生にまつわる秘密であったとしたら?
はっきりとは知らなくとも、お彩がいつしかそれに気付いていなかったとは誰が言えるだろう?
突然の家出を許し、強引に連れ戻すこともしなかったのは、そのせいもある。
だが。
この時、伊八の胸にふと疑念が湧いた。お彩の変化には、もしや他に原因があったのではないか。もし、それが己れの出生の誕生にまつわる秘密であったとしたら?
はっきりとは知らなくとも、お彩がいつしかそれに気付いていなかったとは誰が言えるだろう?

