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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

―こんな冷めたものを私に食べさせようっていうの? ますます食欲がなくなっちまうじゃない。本当に役立たずな子ね。今すぐ温め直してきてよ。
そのときのことを思うと、お彩は今でも屈辱と怒りが込み上げてくる。お彩は普段は他人に対しては滅多と腹を立てない。だが、小巻相手では幾度堪忍袋の緒を切らしそうになったか知れない。お彩は腹立ちを抑えつつ、階下に降りて厨房で粥を温め直し、再び二階へと運んだ。が、あろうことか、小巻はまたしてもその粥が冷たいと言って、癇癪を起こした末、鍋を放り投げたのである。中の粥はそこら中に飛び散り、鍋は粉々に割れた。
お彩は無言で汚れた部屋の始末をし、階下に降りた。店の方は夕飯時とて、客で溢ればかりである。喜六郎は厨房で一人、大わらわで料理の仕込みにかかっていた。
―済まねえな。お彩ちゃん。
そのときのことを思うと、お彩は今でも屈辱と怒りが込み上げてくる。お彩は普段は他人に対しては滅多と腹を立てない。だが、小巻相手では幾度堪忍袋の緒を切らしそうになったか知れない。お彩は腹立ちを抑えつつ、階下に降りて厨房で粥を温め直し、再び二階へと運んだ。が、あろうことか、小巻はまたしてもその粥が冷たいと言って、癇癪を起こした末、鍋を放り投げたのである。中の粥はそこら中に飛び散り、鍋は粉々に割れた。
お彩は無言で汚れた部屋の始末をし、階下に降りた。店の方は夕飯時とて、客で溢ればかりである。喜六郎は厨房で一人、大わらわで料理の仕込みにかかっていた。
―済まねえな。お彩ちゃん。

