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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

いつものように喜六郎が縋るような眼で見、拝むような仕草をする。我が儘な娘を持ったばかりの父親の悲哀といえばいえたが、お彩はこのときばかりは人の好い喜六郎に対して軽い怒りを憶えた。喜六郎が甘やかすから、小巻は余計に我が儘の言い放題になるのだ。
結局、お彩はそれからは喜六郎とも小巻ともひと言も話さず、喜六郎も申し訳ないと思ったのか、いつもより早めに帰って良いと言った。いつもなら、そう言われても最期の客が帰るまでは帰らないのだけれど、昨日は疲れも感じており、喜六郎の言葉に甘えさせて貰った。今から思えば、その頃から具合が悪かったのかもしれない。
結局、お彩はそれからは喜六郎とも小巻ともひと言も話さず、喜六郎も申し訳ないと思ったのか、いつもより早めに帰って良いと言った。いつもなら、そう言われても最期の客が帰るまでは帰らないのだけれど、昨日は疲れも感じており、喜六郎の言葉に甘えさせて貰った。今から思えば、その頃から具合が悪かったのかもしれない。

