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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

お彩は声を限りに父を呼んだ。だが、父の声は聞こえない。姿も見えない。
―ああ、食べられる!!
お彩は眼を固く瞑った。とうとう化け物が真後ろまで迫ってきた。このまま頭からがつがつと食べられて骨も砕けてしまうのだと絶望的な想いになった時、遠くから呼び声が聞こえた。
―お彩、お彩。
この声は父のものに違いない。やはり、父は助けにきてくれたのだ。そう、どんなときだって、父はいつもお彩を見捨てたりなんかしない。
嬉しさと安堵に涙ぐみそうになった。
「―彩、―彩ちゃん。お彩ちゃん」
呼び声は次第に近くなってゆく。ああ、父が来てくれたのだ。お彩は歓びに震えた。
お彩の濃い翳を落とす睫が細かく震えた。うっすらと眼を見開くと、自分を不安げに見つめる男の顔が白濁した視界にぼんやりと映る。
―ああ、食べられる!!
お彩は眼を固く瞑った。とうとう化け物が真後ろまで迫ってきた。このまま頭からがつがつと食べられて骨も砕けてしまうのだと絶望的な想いになった時、遠くから呼び声が聞こえた。
―お彩、お彩。
この声は父のものに違いない。やはり、父は助けにきてくれたのだ。そう、どんなときだって、父はいつもお彩を見捨てたりなんかしない。
嬉しさと安堵に涙ぐみそうになった。
「―彩、―彩ちゃん。お彩ちゃん」
呼び声は次第に近くなってゆく。ああ、父が来てくれたのだ。お彩は歓びに震えた。
お彩の濃い翳を落とす睫が細かく震えた。うっすらと眼を見開くと、自分を不安げに見つめる男の顔が白濁した視界にぼんやりと映る。

