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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第1章 第一話―其の壱―

客は大抵職人や人足、お店者といった男たちで、仕事帰りにふらりと立ち寄ることが多い。見かけはいささか薄汚れた感のある店だが、一歩中に入ると、亭主の喜六郎の几帳面な性格を物語るように存外に小綺麗に整えられている。掃除も行き届いていて、これはすべて賄いを手伝うお彩の仕事だ。
お彩は「花がすみ」に雇われているただ一人の仲居である。十六のお彩は一年前からこの店に通いで奉公しており、亭主の喜六郎はお彩を娘のように可愛がっていた。喜六郎にはかれこれ十年も前に死に別れた女房がいて、その女房との間に一人娘がいた。娘の小巻は既に三年前に日本橋の小さな仏具屋に嫁いでいる。
お彩は「花がすみ」に雇われているただ一人の仲居である。十六のお彩は一年前からこの店に通いで奉公しており、亭主の喜六郎はお彩を娘のように可愛がっていた。喜六郎にはかれこれ十年も前に死に別れた女房がいて、その女房との間に一人娘がいた。娘の小巻は既に三年前に日本橋の小さな仏具屋に嫁いでいる。

