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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第1章 第一話―其の壱―

喜六郎は既に五十に手が届こうかという歳で、二十歳の小巻は結婚七年目に漸く恵まれた娘であった。そのため、喜六郎は小巻を溺愛して育て、結果、娘は父親でさえ手のつけられぬ我が儘娘になった。それでも器量だけは死んだ女房に似て良かったので、仏具屋の若旦那に是非にと望まれ嫁いでいったのだ。
小巻が嫁いだ後、喜六郎はこれまで店を手伝っていた小巻の代わりを必要とし、お彩は店の表の「仲居至急求む」の貼り紙を見て、「花がすみ」で働くことになった。お彩の前にも一人、中年増の女が雇われていたらしいが、これは事情があって長くは続かなかった。
お彩は店の近くの長屋に一人暮らしである。本当はここからそう遠くない場所に父親がいるのだが、その父親とはここ一年は殆ど音信不通だ。お彩は父親と疎遠になって家を出た身なのだ。
小巻が嫁いだ後、喜六郎はこれまで店を手伝っていた小巻の代わりを必要とし、お彩は店の表の「仲居至急求む」の貼り紙を見て、「花がすみ」で働くことになった。お彩の前にも一人、中年増の女が雇われていたらしいが、これは事情があって長くは続かなかった。
お彩は店の近くの長屋に一人暮らしである。本当はここからそう遠くない場所に父親がいるのだが、その父親とはここ一年は殆ど音信不通だ。お彩は父親と疎遠になって家を出た身なのだ。

