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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

伊勢次はいつになく思いつめたようなまなざしでお彩を見つめている。
「こんなときに言うのはどうかとも思うんだが、お彩ちゃん、俺と所帯を持っちゃくれねえか」
「―」
思いもかけぬ言葉に、お彩は驚愕した。
眼を瞠ったまま凍りつく。
「今すぐ返事をくれとは言わねえから、考えてみて欲しいんだ」
いかにも伊勢次らしい控えめな求愛であった。伊勢次はどんなときでも、相手に無理強いをしたり強引な態度に出たりはしないのだ。その態度が優柔不断に見える女もいるようだが、お彩は、それが伊勢次の優しさ、相手への労りだと知っている。
「こんなときに言うのはどうかとも思うんだが、お彩ちゃん、俺と所帯を持っちゃくれねえか」
「―」
思いもかけぬ言葉に、お彩は驚愕した。
眼を瞠ったまま凍りつく。
「今すぐ返事をくれとは言わねえから、考えてみて欲しいんだ」
いかにも伊勢次らしい控えめな求愛であった。伊勢次はどんなときでも、相手に無理強いをしたり強引な態度に出たりはしないのだ。その態度が優柔不断に見える女もいるようだが、お彩は、それが伊勢次の優しさ、相手への労りだと知っている。

