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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

あの日、確かに母はお彩に言った。
―このお墓の下で眠る人はお前にとって大切なひとなんだよ。
そして、一面に蓮を浮かべた池のほとりから眺める光景をずっと憶えておくようにとも言ったはずだ。
お彩は漸くある結論に至った。母に連れられて詣でた墓の主がお彩の実父ではないか。お絹も亡くなった今、そのことを確かめる術はなかったけれど、お彩は確信めいたものを感じていた。
あの墓に向かって合掌していた母の横顔はとても淋しげで、今にも泣き出しそうに見えた。母の表情を見て、お彩はこの墓の主はお彩にとってだけでなく母にとっても大切な人だったのだと子どもながらに感じたものだった。
物想いに沈むお彩に、伊八の声が響く。
「お前のおとっつぁんは立派に惚れた女と我が子を守り抜いた。お前はそのことを誇りに思って生きていけば良い」
―このお墓の下で眠る人はお前にとって大切なひとなんだよ。
そして、一面に蓮を浮かべた池のほとりから眺める光景をずっと憶えておくようにとも言ったはずだ。
お彩は漸くある結論に至った。母に連れられて詣でた墓の主がお彩の実父ではないか。お絹も亡くなった今、そのことを確かめる術はなかったけれど、お彩は確信めいたものを感じていた。
あの墓に向かって合掌していた母の横顔はとても淋しげで、今にも泣き出しそうに見えた。母の表情を見て、お彩はこの墓の主はお彩にとってだけでなく母にとっても大切な人だったのだと子どもながらに感じたものだった。
物想いに沈むお彩に、伊八の声が響く。
「お前のおとっつぁんは立派に惚れた女と我が子を守り抜いた。お前はそのことを誇りに思って生きていけば良い」

