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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

自然に言葉がこぼれ落ちた。
何故かこの男の前だと、素直になれる。素のありのままの自分をさらしても良いような気になるのが不思議だ。
「本当のおとっつぁんがたとえどこの誰であろうと、お前さんにとっては今の、十七年間育ててくれた伊八さんだけが父親だろう? 何よりお前さん自身が伊八さんをただ一人のおとっつぁんだと認めているんじゃねえのかい」
男の声は低く、静かで、ぞっとするほど真剣だった。
「素直になれば良い。伊八さんを父親だと慕うその心に素直になるんだ。さもなければ、つまなねえ意地で大切な人を失うことになるぞ」
「自分の心に素直に―」
お彩は男の言葉をなぞった。
川のほとりに立つと、風が身体を通り抜け、川の囁き声が聞こえる。
何故かこの男の前だと、素直になれる。素のありのままの自分をさらしても良いような気になるのが不思議だ。
「本当のおとっつぁんがたとえどこの誰であろうと、お前さんにとっては今の、十七年間育ててくれた伊八さんだけが父親だろう? 何よりお前さん自身が伊八さんをただ一人のおとっつぁんだと認めているんじゃねえのかい」
男の声は低く、静かで、ぞっとするほど真剣だった。
「素直になれば良い。伊八さんを父親だと慕うその心に素直になるんだ。さもなければ、つまなねえ意地で大切な人を失うことになるぞ」
「自分の心に素直に―」
お彩は男の言葉をなぞった。
川のほとりに立つと、風が身体を通り抜け、川の囁き声が聞こえる。

