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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

男に逢えた嬉しさとホッとしたのとで、我を忘れたらしい。我ながら大胆なことをしたものだと今更ながらに頬が熱くなった。
「あなたは本当にいつも、何もかも知っているんですね」
お彩が頬を染めて言うと、男は魅惑的な笑みを浮かべた。
「私はいつもお前さんの傍にいると言っただろう?」
男は軽い口調で返し、つとお彩を見た。
お彩は変わることのない流れをじっと見つめている。川はいつも泰然と流れているのに、自分はどうして些細なことに拘ってばかりいるのだろう。そう思うと、哀しくなる。
「どうしても素直になれないんです。この前やっとおっつぁんと判り合えたと思っていたばかりなのに。私、おとっつぁんの本当の娘じゃなかった。あんなに大好きなのに、私のおとっつぁんは何の血の繋がりもない人だったんです」
「あなたは本当にいつも、何もかも知っているんですね」
お彩が頬を染めて言うと、男は魅惑的な笑みを浮かべた。
「私はいつもお前さんの傍にいると言っただろう?」
男は軽い口調で返し、つとお彩を見た。
お彩は変わることのない流れをじっと見つめている。川はいつも泰然と流れているのに、自分はどうして些細なことに拘ってばかりいるのだろう。そう思うと、哀しくなる。
「どうしても素直になれないんです。この前やっとおっつぁんと判り合えたと思っていたばかりなのに。私、おとっつぁんの本当の娘じゃなかった。あんなに大好きなのに、私のおとっつぁんは何の血の繋がりもない人だったんです」

