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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第8章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の弐

お彩はそっと首を振る。
「あなたは父を、伊八をご存じなのですか」
つい今し方、男は確かに父を「伊八さん」と呼んだ。もとより、お彩のすべてを知っていると言う男ゆえ、父の名を知っていたからとて不思議はないのかもしれないが―。
男はその問いには応えず、端整な面に謎めいた微笑を刻んだだけであった。
「次に逢うときは笑って見せてくれるね」
男は静かな思いやりを湛えた眼でお彩を見つめる。
お彩は縋るようなまなざしを男に向けた。
「お願いです。あなたのお名前だけ教えて貰えませんか」
わずかな静寂が流れ、男が淡く笑った。
「―陽太」
「陽太さん?」
小首を傾げるお彩に、陽太と名乗った男が不敵な笑みを見せた。
「あなたは父を、伊八をご存じなのですか」
つい今し方、男は確かに父を「伊八さん」と呼んだ。もとより、お彩のすべてを知っていると言う男ゆえ、父の名を知っていたからとて不思議はないのかもしれないが―。
男はその問いには応えず、端整な面に謎めいた微笑を刻んだだけであった。
「次に逢うときは笑って見せてくれるね」
男は静かな思いやりを湛えた眼でお彩を見つめる。
お彩は縋るようなまなざしを男に向けた。
「お願いです。あなたのお名前だけ教えて貰えませんか」
わずかな静寂が流れ、男が淡く笑った。
「―陽太」
「陽太さん?」
小首を傾げるお彩に、陽太と名乗った男が不敵な笑みを見せた。

