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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第9章 第四話 【ほたる草】 一

【其の壱】
最後に残った水を柄杓で掬い、勢いよく地面に撒くと、お彩は小さな吐息を一つ、零した。乾いた土は忽ちのうちに僅かな水分を吸い取ってゆく。まだ朝四ツ(午前十時)前であったが、既に太陽は頭上高く輝き、地上のすべてのものを容赦なく灼き尽くそうとしていた。何げなく空を振り仰いだお彩は、その強い輝きに眼を射られるような気がした。軽い眩暈を憶え、お彩は額の前に手をかざした。
その瞼にふと一人の男の面影が浮かぶ。いつも風のように気紛れにお彩の前に立ち現れては、束の間の時間を共にして、いずこへともなく消えてゆく男。その男と初めて出逢ったのは、もう三年近くも前のことになる。
最後に残った水を柄杓で掬い、勢いよく地面に撒くと、お彩は小さな吐息を一つ、零した。乾いた土は忽ちのうちに僅かな水分を吸い取ってゆく。まだ朝四ツ(午前十時)前であったが、既に太陽は頭上高く輝き、地上のすべてのものを容赦なく灼き尽くそうとしていた。何げなく空を振り仰いだお彩は、その強い輝きに眼を射られるような気がした。軽い眩暈を憶え、お彩は額の前に手をかざした。
その瞼にふと一人の男の面影が浮かぶ。いつも風のように気紛れにお彩の前に立ち現れては、束の間の時間を共にして、いずこへともなく消えてゆく男。その男と初めて出逢ったのは、もう三年近くも前のことになる。

