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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第9章 第四話 【ほたる草】 一

何故、男に惹かれるのか―、お彩は初めは判らなかったけれど、ある時ふと気付いたのだ。男の端整な貌に時折よぎる暗い翳、深い光を湛えた瞳の奥底に揺れる孤独と絶望、それらがお彩の心を捉えて離さないのであった。当時、お彩もまた、心に大きな孤独を抱えていた。
お彩の父は江戸でも随一と呼ばれる腕の良い飾り職人伊八である。伊八の師匠の喜作もまた、かつては名人の名を欲しいままにした根っからの職人であった。お彩は夜泣き蕎麦屋をしていた母お絹の死後は、父伊八と二人で甚平店と呼ばれる裏店に暮らしていた。あろうことか、お彩はその実の父親に惚れてしまったのである。
お彩の父は江戸でも随一と呼ばれる腕の良い飾り職人伊八である。伊八の師匠の喜作もまた、かつては名人の名を欲しいままにした根っからの職人であった。お彩は夜泣き蕎麦屋をしていた母お絹の死後は、父伊八と二人で甚平店と呼ばれる裏店に暮らしていた。あろうことか、お彩はその実の父親に惚れてしまったのである。

