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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第9章 第四話 【ほたる草】 一

のだ。店の方が忙しくて、それでなくとも猫の手も借りたい時分に呼びつけられて二階までゆくときは、泣きたい気分だった。
そんな小巻も母となってからは、別人のようになった。これまでは精神的に子どもじみたところがあったのだろうが、やはり人並みに母親となり、心的な成長を遂げたらしい。
人当たりが見違えるようにやわらかくなり、お彩にも気遣いを見せ「ありがとう」とこれまで耳にしたことのないような礼の台詞まで口にするようになった。小巻は産後一カ月を実家の「花がすみ」で過ごし、ついひと月ほど前に敬次郎と名付けられた長男と共に婚家に戻っている。
お彩としては甥っ子のように可愛がっていた敬次郎が去り、何か心にぽっかりと穴が空いたような、所在なさがあった。
そんな小巻も母となってからは、別人のようになった。これまでは精神的に子どもじみたところがあったのだろうが、やはり人並みに母親となり、心的な成長を遂げたらしい。
人当たりが見違えるようにやわらかくなり、お彩にも気遣いを見せ「ありがとう」とこれまで耳にしたことのないような礼の台詞まで口にするようになった。小巻は産後一カ月を実家の「花がすみ」で過ごし、ついひと月ほど前に敬次郎と名付けられた長男と共に婚家に戻っている。
お彩としては甥っ子のように可愛がっていた敬次郎が去り、何か心にぽっかりと穴が空いたような、所在なさがあった。

