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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第9章 第四話 【ほたる草】 一

何しろ、お彩を自分専用の女中だと勘違いをしていて、私用をひっきりなしに言いつける「小巻さん、お帰りなさい」
お彩が手を振ると、小巻がハッとしたような表情になった。背に負われた敬次郎はぐっすりと寝入っているようだ。
「敬次郎ちゃんは大きくなりましたか」
お彩は近付いてきた小巻の背中の赤児を覗き込んだ。生後二カ月になる敬次郎は大分眼鼻立ちがはっきりとしてきたようだ。流石に歌舞伎役者の某に似ているとこれまた評判の美男偉兵衛と「小町」と謳われた小巻夫婦の倅らしく、赤子ながら早くも整った貌立ちをしていた。
「まあ、すっかり男前になって」
生まれた直後の敬次郎を見ているお彩は笑った。生まれたての赤ン坊というものは皆、真っ赤で猿のようなものだとは知らず、これが本当に美男美女、似合いの夫婦として知られる二人の間の子かと疑ってしまったほどだ。
お彩が手を振ると、小巻がハッとしたような表情になった。背に負われた敬次郎はぐっすりと寝入っているようだ。
「敬次郎ちゃんは大きくなりましたか」
お彩は近付いてきた小巻の背中の赤児を覗き込んだ。生後二カ月になる敬次郎は大分眼鼻立ちがはっきりとしてきたようだ。流石に歌舞伎役者の某に似ているとこれまた評判の美男偉兵衛と「小町」と謳われた小巻夫婦の倅らしく、赤子ながら早くも整った貌立ちをしていた。
「まあ、すっかり男前になって」
生まれた直後の敬次郎を見ているお彩は笑った。生まれたての赤ン坊というものは皆、真っ赤で猿のようなものだとは知らず、これが本当に美男美女、似合いの夫婦として知られる二人の間の子かと疑ってしまったほどだ。

