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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】 其の壱

その言葉はただでさえ緊迫した空気を更に険悪なものにさせてしまった。が、子どもは自分の言葉がそのような効果をもたらしたことなぞ知るはずもなく、にこにこと笑って母親と喜六郎を交互に見ている。
「本当だねえ、おっかさんがいつも話してくれるとおりだ。優しそうなおとっつぁんだね」
子どもはさも嬉しげに言う。
喜六郎の顔はもう蒼白で、白いのを通り越して蒼くなっていた。
「おきみ、本当なのか、この子は俺の―」
今度は女が皆まで言わせなかった。
「そうです、この子は、承平は旦那さんの子です」
喜六郎の言葉に被せるように、おきみという女が言い放った。おきみは承平と呼んだ我が子を手許に引き寄せた。
「誰が何と言おうと、旦那さんが信じなさるまいと、この子は正真正銘、旦那さんと私の子です」
「本当だねえ、おっかさんがいつも話してくれるとおりだ。優しそうなおとっつぁんだね」
子どもはさも嬉しげに言う。
喜六郎の顔はもう蒼白で、白いのを通り越して蒼くなっていた。
「おきみ、本当なのか、この子は俺の―」
今度は女が皆まで言わせなかった。
「そうです、この子は、承平は旦那さんの子です」
喜六郎の言葉に被せるように、おきみという女が言い放った。おきみは承平と呼んだ我が子を手許に引き寄せた。
「誰が何と言おうと、旦那さんが信じなさるまいと、この子は正真正銘、旦那さんと私の子です」

