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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】 其の壱

おきみはキッとした眼で喜六郎を見て、言い切った。
「―」
喜六郎はもう茫然自失で、声も出ない様子である。お彩は気遣わしげな表情で喜六郎を見た。
喜六郎の身体がフラリと傾いだ。
「旦那さん?」
お彩が愕いて叫び声を上げた。
「大丈夫だ」
喜六郎はお彩に眼顔で頷いてみせると、存外にしっかりとした足取りで一歩女の方に近づいた。
「承平っていうのか、その子は」
が、女は逆に怖れるかのように倅をひしと抱きしめた。あたかも喜六郎が息子を奪ってでもゆくといわんばかりだ。
「―」
喜六郎はもう茫然自失で、声も出ない様子である。お彩は気遣わしげな表情で喜六郎を見た。
喜六郎の身体がフラリと傾いだ。
「旦那さん?」
お彩が愕いて叫び声を上げた。
「大丈夫だ」
喜六郎はお彩に眼顔で頷いてみせると、存外にしっかりとした足取りで一歩女の方に近づいた。
「承平っていうのか、その子は」
が、女は逆に怖れるかのように倅をひしと抱きしめた。あたかも喜六郎が息子を奪ってでもゆくといわんばかりだ。

