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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】 其の壱

「申し訳ありません」
お彩が狼狽えて謝ると、おきみはかすかに首を振る。
「いいえ、私の方こそぼんやりと歩いていたものだから」
こうして改めて間近で見ても、美しい女てであった。華やかさはないが、ひっそりと開く花のような風情がある。どことはなしに影の薄いのは、あまりにも淋しげな雰囲気が漂っているからだろう。喜六郎の娘小巻はかつて「小町」ともてはやされたほどの器量で、小股の切れ上がった派手やかな美貌だ。しかし、その父親の喜六郎は小巻とは似ても似つかない。いつだったか、近所の八百屋の女房が言っていた。
―喜六郎さんも小巻ちゃんも嫁にいったことだし、良い加減に後添えを貰えば良いのにねえ。もっとも、ハゼが豆鉄砲喰らったようなあのご面相では嫁の来てがないかもしれないねえ。
お彩が狼狽えて謝ると、おきみはかすかに首を振る。
「いいえ、私の方こそぼんやりと歩いていたものだから」
こうして改めて間近で見ても、美しい女てであった。華やかさはないが、ひっそりと開く花のような風情がある。どことはなしに影の薄いのは、あまりにも淋しげな雰囲気が漂っているからだろう。喜六郎の娘小巻はかつて「小町」ともてはやされたほどの器量で、小股の切れ上がった派手やかな美貌だ。しかし、その父親の喜六郎は小巻とは似ても似つかない。いつだったか、近所の八百屋の女房が言っていた。
―喜六郎さんも小巻ちゃんも嫁にいったことだし、良い加減に後添えを貰えば良いのにねえ。もっとも、ハゼが豆鉄砲喰らったようなあのご面相では嫁の来てがないかもしれないねえ。

