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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】 其の壱

その八百屋はいつも店で使う食材を仕入れる店で、女房も三十ほどの気の良い女だった。
その分だけお人好しというか人情味があるのが喜六郎の取り柄なのだ。それはともかく、おきみという女のそこはかとない愁いの漂う美貌はいかにも喜六郎好みといえた。
「あの、旦那さんなら今は近くの八百屋まで買い出しに出ていますから、おっつけ戻ってきなさると思いますよ。中でお待ちなさいますか」
お彩が控えめに言うと、おきみは微笑んだ。
「ご親切にありがとうございます」
幾ら喜六郎にとっては歓迎すべからざる客であったとしても、この夏場の炎天下にずっと放っておくことはできない。それに、お彩はこのおきみが性悪な女だとはどうしても思えないのだ。かつては喜六郎とも深間でありながら、突然店を辞めたことは事実なのだろうが、その裏にはおきみ自身の訴えるように何か相応の事情がありそうな気がする。
その分だけお人好しというか人情味があるのが喜六郎の取り柄なのだ。それはともかく、おきみという女のそこはかとない愁いの漂う美貌はいかにも喜六郎好みといえた。
「あの、旦那さんなら今は近くの八百屋まで買い出しに出ていますから、おっつけ戻ってきなさると思いますよ。中でお待ちなさいますか」
お彩が控えめに言うと、おきみは微笑んだ。
「ご親切にありがとうございます」
幾ら喜六郎にとっては歓迎すべからざる客であったとしても、この夏場の炎天下にずっと放っておくことはできない。それに、お彩はこのおきみが性悪な女だとはどうしても思えないのだ。かつては喜六郎とも深間でありながら、突然店を辞めたことは事実なのだろうが、その裏にはおきみ自身の訴えるように何か相応の事情がありそうな気がする。

