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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】 其の壱

―おとっつぁんが見たら、やっぱり、おっかさんの娘だから、私まで他人さまのもめ事にやたらと首を突っ込みたがるんだなって、笑うかもしれない。
お絹の口癖はいつも決まっていた。
―心に花を咲かせるんだよ。
一生かかっても良いから、心に自分だけにしか咲かせることのできない花を咲かせるのだと、幼い時分からお彩に言い聞かせ続けてきた。
父も母もお彩にとっては憧れの存在だった。いつか自分も母のように自分だけの花を、たとえ小さくとも精一杯開いた花を心に咲かせることかせできればと願わずにはおれないお彩である。
父の住む甚平店とお彩の住む長屋は眼と鼻の先である。数日に一度ほどの割合で父を訪ねるのが日課にはなっていた。ときには喜六郎が「お裾分け」と称して、少し多めに作った惣菜を持たせてくれることもあり、それを伊八に届けたりする。
お絹の口癖はいつも決まっていた。
―心に花を咲かせるんだよ。
一生かかっても良いから、心に自分だけにしか咲かせることのできない花を咲かせるのだと、幼い時分からお彩に言い聞かせ続けてきた。
父も母もお彩にとっては憧れの存在だった。いつか自分も母のように自分だけの花を、たとえ小さくとも精一杯開いた花を心に咲かせることかせできればと願わずにはおれないお彩である。
父の住む甚平店とお彩の住む長屋は眼と鼻の先である。数日に一度ほどの割合で父を訪ねるのが日課にはなっていた。ときには喜六郎が「お裾分け」と称して、少し多めに作った惣菜を持たせてくれることもあり、それを伊八に届けたりする。

