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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】 其の壱

他人を疑ったりすることはしたくはなかったけれど、どう考えみても、自分が女に好意を持たれる類の男だとは思えなかった。ただ容姿の問題だけではなく、喜六郎は女を歓ばせる気の利いた台詞一つ満足に言えない質なのだ。真面目といえば聞こえは良いが、要するに粋や通といったものとはおよそ無縁の朴念仁であった。
死んだ女房は遠縁に当たり、物心つく頃から親同士の取り決めた縁談で一緒になった。この女房が他人が羨むほどの器量よしであり、一人娘の小巻は死んだ女房に似ているのだ。
それでも、一途に好きだと訴え、切なげなまなざしで見つめられれば、喜六郎は身体がカッと熱くなった。女房一人を守って岡場所にも一度として足を踏み入れたことのない喜六郎も所詮は男である。
死んだ女房は遠縁に当たり、物心つく頃から親同士の取り決めた縁談で一緒になった。この女房が他人が羨むほどの器量よしであり、一人娘の小巻は死んだ女房に似ているのだ。
それでも、一途に好きだと訴え、切なげなまなざしで見つめられれば、喜六郎は身体がカッと熱くなった。女房一人を守って岡場所にも一度として足を踏み入れたことのない喜六郎も所詮は男である。

