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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第12章 第五話 【夏霧】 其の壱

ついに、おきみと一線を越え、深間になった。おきみが住み込みで働いていたということもあり、二人は表の駆行燈を消した後、二階の喜六郎の寝間で夜通し、愛し合った。おきみとの関係はそれ以後も二月ほどは続いた。そんなある朝、「花がすみ」から突然、おきみの姿がかき消すように消えた。
「朝起きたら、それこそ布団はもぬけの殻さ。それだけじゃねえ、わしの部屋にある手文庫の中の金も全部きれいさっぱり無くなっちまってた」
お彩は絶句した。喜六郎の四角張った顔に自嘲いめた笑いが浮かんでいた。
「これで判っただろう? おきみは端からわしに惚れてなんぞいなかったんだ。店の金が目当てで、わしに抱かれたのさ」
喜六郎は吐き捨てるように言った。
「朝起きたら、それこそ布団はもぬけの殻さ。それだけじゃねえ、わしの部屋にある手文庫の中の金も全部きれいさっぱり無くなっちまってた」
お彩は絶句した。喜六郎の四角張った顔に自嘲いめた笑いが浮かんでいた。
「これで判っただろう? おきみは端からわしに惚れてなんぞいなかったんだ。店の金が目当てで、わしに抱かれたのさ」
喜六郎は吐き捨てるように言った。

