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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第13章 第五話 【夏霧】 其の弐

「だって、承平ちゃんは、旦那さんの子どもなんでしょう。なのに、ろくに逢わせもせずに行ってしまうなんて、そんなの親の身勝手だわ」
お彩は、おきみをひたと見据えた。
「お願いです、せめて承平ちゃんを旦那さんに逢わせてあげて下さいませんか」
短い沈黙があった。おきみは黙って川の流れを見つめている。その時、存外に涼しい川風が水面を通り過ぎた。その拍子に水の流れが斜めに交わり、水面に模様ができた。おきみはその水の綾をじいっと眺めながら、呟いた。
「違うんですよ」
「え」
お彩はいきなりの言葉に眼を瞠った。
おきみの視線が動き、お彩を捉えた。
「違うんです」
【水の綾】―風などによって水の流れが斜めに交わり、水面にできた模様。織物や書、日本画などで用いられる模様の名ともなっている。
お彩は、おきみをひたと見据えた。
「お願いです、せめて承平ちゃんを旦那さんに逢わせてあげて下さいませんか」
短い沈黙があった。おきみは黙って川の流れを見つめている。その時、存外に涼しい川風が水面を通り過ぎた。その拍子に水の流れが斜めに交わり、水面に模様ができた。おきみはその水の綾をじいっと眺めながら、呟いた。
「違うんですよ」
「え」
お彩はいきなりの言葉に眼を瞠った。
おきみの視線が動き、お彩を捉えた。
「違うんです」
【水の綾】―風などによって水の流れが斜めに交わり、水面にできた模様。織物や書、日本画などで用いられる模様の名ともなっている。

