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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第13章 第五話 【夏霧】 其の弐

が、流石の女将もよし乃の腹に男の子が宿っていることまでは勘づかなかった。腹の子を堕ろせと言われるのが怖くて、よし乃が黙っていたのだ。懐妊が露見したときは既に七月に入っていた。女将は慌てて、よし乃を人知れぬ場所に隠し、よし乃はそこでひそかに身二つになった。隠居にはよし乃がちょっとした病気で静養していると騙し、身軽になったよし乃はやがて隠居に身請けされて囲われる身となった。
生まれた子は女児で、その子はすぐにひそかに里子に出された。おきみは小さいながらも羽振りの良い植木屋夫婦の養女となり、可愛がられて育った。老夫婦には実子がいなかったので、おきみは実の娘として育てられ、十六の歳には養父の弟子の一人を婿に迎えた。いずれはその婿が養父の跡目を継ぐはずであった。
生まれた子は女児で、その子はすぐにひそかに里子に出された。おきみは小さいながらも羽振りの良い植木屋夫婦の養女となり、可愛がられて育った。老夫婦には実子がいなかったので、おきみは実の娘として育てられ、十六の歳には養父の弟子の一人を婿に迎えた。いずれはその婿が養父の跡目を継ぐはずであった。

