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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第14章 第六話 【春の雨】 其の壱

お彩自身、しょっ中、陽太とはもう二度と逢えない、これっきりなのではないかと思うことがある。それでも。
不安がどす黒く心を染めるときには必ず信じるようにしている。
自分の陽太を好きだという気持ちを、想いを大切にしてゆけば、いつかまた必ず惚れた男へと運命は導いてくれるはずだ、と。
花見の時季は、店はいつもより更に客が多い。殊に表の軒燈の灯りを落とす一刻ほど前のこの時間は狭い店内は満員状態である。付近に江戸の桜の名所として知られる随明寺があるので、夜桜見物の帰りに立ち寄る飛び込みの客が多いのだ。
随明寺は黄檗宗の名刹で、開基は浄徳大和尚。浄徳は京都の万福寺を開いた高僧隠元隆琦(りゅうき)の高弟であり、時の帝から紫衣・大師号を許されたほどり名僧であった。
不安がどす黒く心を染めるときには必ず信じるようにしている。
自分の陽太を好きだという気持ちを、想いを大切にしてゆけば、いつかまた必ず惚れた男へと運命は導いてくれるはずだ、と。
花見の時季は、店はいつもより更に客が多い。殊に表の軒燈の灯りを落とす一刻ほど前のこの時間は狭い店内は満員状態である。付近に江戸の桜の名所として知られる随明寺があるので、夜桜見物の帰りに立ち寄る飛び込みの客が多いのだ。
随明寺は黄檗宗の名刹で、開基は浄徳大和尚。浄徳は京都の万福寺を開いた高僧隠元隆琦(りゅうき)の高弟であり、時の帝から紫衣・大師号を許されたほどり名僧であった。

