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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第14章 第六話 【春の雨】 其の壱

もっとも、和解とはいっても、別段、父とお彩は仲違いをしていたというわけではない。ただ、お彩の方に父を避けざるを得なかった一方的な事情があっただけだ。しかし、それも、お彩が陽太への恋心を強く自覚することによって、ごく自然に解消してしまった。
が、その肝心の陽太とは滅多と逢うことはできない。何しろ、お彩は陽太の確かな素性を知らないのだ。最初は「花がすみ」の客としてお彩の眼の前に現れた彼に次第に惹かれるようになったのだ。陽太はお彩が何かの問題に直面して困ったり悩んだりするときは必ず現れ、何かしら適切な助言をくれる。
だが、言ってみれば、そんなときだけしか現れないのだ。まるで風のように気紛れに現れ、たちどころに消えてゆく。それは、あたかも空で輝く月のようであった。どんなに焦がれ手を伸ばしても、空に輝く月に触れることはできないのと同じだ。
が、その肝心の陽太とは滅多と逢うことはできない。何しろ、お彩は陽太の確かな素性を知らないのだ。最初は「花がすみ」の客としてお彩の眼の前に現れた彼に次第に惹かれるようになったのだ。陽太はお彩が何かの問題に直面して困ったり悩んだりするときは必ず現れ、何かしら適切な助言をくれる。
だが、言ってみれば、そんなときだけしか現れないのだ。まるで風のように気紛れに現れ、たちどころに消えてゆく。それは、あたかも空で輝く月のようであった。どんなに焦がれ手を伸ばしても、空に輝く月に触れることはできないのと同じだ。

