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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第14章 第六話 【春の雨】 其の壱

実は、伊八はお彩の実の父親ではない。お彩の母お絹は夜泣き蕎麦屋をしていたが、その母が吉之助という男に犯されて身籠もった子であった。伊八はその事実を知りつつもなお、お彩を我が子として慈愛を注いでくれた。お彩がその出世の真実を知ったのは、今から丁度一年前のことであった。その時、お彩は随分と悩んでいた。そんな彼女に伊勢次は自らもまた大切に思う母親が実の母ではなく継母であるという重大な秘密を打ち明けたのだ。
―俺は実の親子かどうかってえいう事実よりも、俺とお袋がこれまで親子ととして過ごしてきた年月の方を大切にしてえんだ。
血の繋がりも大切だけれど、それよりも更に大切なものが心と心の絆なのだと、伊勢次はお彩に教えてくれた。それも、これまで誰に話したことさえない我が身の事情を打ち明けてまで。
―俺は実の親子かどうかってえいう事実よりも、俺とお袋がこれまで親子ととして過ごしてきた年月の方を大切にしてえんだ。
血の繋がりも大切だけれど、それよりも更に大切なものが心と心の絆なのだと、伊勢次はお彩に教えてくれた。それも、これまで誰に話したことさえない我が身の事情を打ち明けてまで。

