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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第14章 第六話 【春の雨】 其の壱

喜六郎はこの人の好い真面目な若者がお彩に惚れていることを知っている。お彩も伊勢次もどちらも話したことはない。だが、伊勢次と同じく滅法人の好いのだけが取り柄の喜六郎もやはり五十年生きているだけに、男女の機知も少しは察せられる。
伊勢次がお彩を見つめるときの熱っぽい視線は、間違いなく恋する男特有のものである。けして男前とはいえない喜六郎も若い頃は美人で評判の女房をそんな熱のこもったまなざしで見つめたことがあった。伊勢次のお彩を想うひたむきさは、喜六郎に己れの青春時代を懐かしく思い起こさせる。また、喜六郎は伊勢次の真面目で誠実なところも気に入っていた。
とかく若い娘を一時の慰み者にするけしからぬ男も少なくはないけれど、伊勢次ならば、そんな心配はない。伊勢次のお彩を想う気持ちは真実のものだし、伊勢次がお彩と所帯を持つ気でいるのも判った。
伊勢次がお彩を見つめるときの熱っぽい視線は、間違いなく恋する男特有のものである。けして男前とはいえない喜六郎も若い頃は美人で評判の女房をそんな熱のこもったまなざしで見つめたことがあった。伊勢次のお彩を想うひたむきさは、喜六郎に己れの青春時代を懐かしく思い起こさせる。また、喜六郎は伊勢次の真面目で誠実なところも気に入っていた。
とかく若い娘を一時の慰み者にするけしからぬ男も少なくはないけれど、伊勢次ならば、そんな心配はない。伊勢次のお彩を想う気持ちは真実のものだし、伊勢次がお彩と所帯を持つ気でいるのも判った。

