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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】 其の弐

筵を敷いて、呑めや歌えやのどんちゃん騒ぎですっかり盛り上がっている一団もあれば、静かに談笑する老夫婦、樹の下で幼い子を遊ばせる若い家族連れ―、もちろん仲良さげな恋人たちが語らう微笑ましい姿もある。
誰もが愛する人、大切な人と共に過ごし、この得難いひとときを分かち合っている。それにつけても、お彩の中に新たな哀しみが湧き上がる。一昨日の夜、正式な断りをしてからというもの、伊勢次の哀しげな顔が頭から離れないでいた。伊勢次が心底我が身を想ってくれりていることが判るだけに、やるせなく辛い。なのに、肝心の陽太はもう去年の七月からふっつりと姿を見せなくなっている。
自分の陽太を好きだという気持ちだけを信じていれば良い。そう思うことで、惚れた男に逢えぬ淋しさに耐えてきたけれど、そろそろ限界だった。お彩は先の見えない恋への焦りと不安で烈しく揺れ動いていた。
誰もが愛する人、大切な人と共に過ごし、この得難いひとときを分かち合っている。それにつけても、お彩の中に新たな哀しみが湧き上がる。一昨日の夜、正式な断りをしてからというもの、伊勢次の哀しげな顔が頭から離れないでいた。伊勢次が心底我が身を想ってくれりていることが判るだけに、やるせなく辛い。なのに、肝心の陽太はもう去年の七月からふっつりと姿を見せなくなっている。
自分の陽太を好きだという気持ちだけを信じていれば良い。そう思うことで、惚れた男に逢えぬ淋しさに耐えてきたけれど、そろそろ限界だった。お彩は先の見えない恋への焦りと不安で烈しく揺れ動いていた。

