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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】 其の弐

一体、何を信じ、どうすれば良いのか。
今はただ、陽太にひとめ逢いたかった。
それなのに、陽太は逢いにこない。お彩が逢いにゆくすべもない。
お彩は子どもの頃から、この場所が大好きだった。殊に大好きな桜の季節にはよく両親に連れられて随明寺に花見にきたものだ。我が子ではない子を身籠もっていると知りながら、母と添い遂げた父。今でも臆面もなしに
―お絹に惚れている。
そう言う父。そんな父と母の姿を間近に見て育ってきたお彩だったけれど、果たして我が身にそんな相手が本当にいるのかと疑問に思ってしまう。自分が心底惚れているのは陽太ただ一人だと判ってはいても、陽太はあまりにも遠い世界の人であった。
名前さえ知らぬ男と添い遂げるなぞ、世間知らずのお彩だとて、夢のまた夢だと判っている。
今はただ、陽太にひとめ逢いたかった。
それなのに、陽太は逢いにこない。お彩が逢いにゆくすべもない。
お彩は子どもの頃から、この場所が大好きだった。殊に大好きな桜の季節にはよく両親に連れられて随明寺に花見にきたものだ。我が子ではない子を身籠もっていると知りながら、母と添い遂げた父。今でも臆面もなしに
―お絹に惚れている。
そう言う父。そんな父と母の姿を間近に見て育ってきたお彩だったけれど、果たして我が身にそんな相手が本当にいるのかと疑問に思ってしまう。自分が心底惚れているのは陽太ただ一人だと判ってはいても、陽太はあまりにも遠い世界の人であった。
名前さえ知らぬ男と添い遂げるなぞ、世間知らずのお彩だとて、夢のまた夢だと判っている。

