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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】 其の弐

なのに、自分は何故、あの男を待ち続けるのだろう。伊勢次のように誠実な、実直な相手を良人に選ぼうと思えば選べるのに、わざわざ茨の道を進もうとするのか。
陽太と逢う度に、もうこれっきり逢えないのではないかという不安を感じずにはおれない。そんな想いをしてまで、なにゆえ、あの男に惹かれるのか。
陽太のことを忘れたくて、随明寺に桜を見にきてみたが、どうやら逆効果だったようだ。いかにも楽しげに笑いさざめく人々を見れば見るほど、お彩の孤独感はいっそう増した。―いっそのこと、明日は、おとっつぁんでも誘ってもう一度来てみようかしら。
甚平店に住む父伊八の許には様子を見がてら訪れてはいるが、ここ数日は忙しさに取り紛れて顔を見ていない。父と共に来れば、少しは気も紛れるかもしれないなぞと考えながら、お彩は無意識の中に足許の小石を拾った。
陽太と逢う度に、もうこれっきり逢えないのではないかという不安を感じずにはおれない。そんな想いをしてまで、なにゆえ、あの男に惹かれるのか。
陽太のことを忘れたくて、随明寺に桜を見にきてみたが、どうやら逆効果だったようだ。いかにも楽しげに笑いさざめく人々を見れば見るほど、お彩の孤独感はいっそう増した。―いっそのこと、明日は、おとっつぁんでも誘ってもう一度来てみようかしら。
甚平店に住む父伊八の許には様子を見がてら訪れてはいるが、ここ数日は忙しさに取り紛れて顔を見ていない。父と共に来れば、少しは気も紛れるかもしれないなぞと考えながら、お彩は無意識の中に足許の小石を拾った。

