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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】 其の弐

お彩の父伊八にも十分話した上で、納得して貰わなければならない。伊八は四年前に女房を亡くし、いまだに独り身である。喜六郎も女房を早くに喪い、男手一つで小巻を育てた。可愛い娘のために後添えも娶らぬ伊八の心中には共感できるものがあった。
その話は抜きにしたとしても、喜六郎は伊勢次とお彩の二人共が気に入っていた。叶うことならば、二人が所帯を持って幸せになって欲しいと願う気持ちは変わらない。伊勢次とお彩ならば、似合いの夫婦になるだろう。
血相を変えて随明寺へと駆けてゆく伊勢次を見送りながら、喜六郎は人の好さそうな四角い顔に笑みを浮かべたのである。
その話は抜きにしたとしても、喜六郎は伊勢次とお彩の二人共が気に入っていた。叶うことならば、二人が所帯を持って幸せになって欲しいと願う気持ちは変わらない。伊勢次とお彩ならば、似合いの夫婦になるだろう。
血相を変えて随明寺へと駆けてゆく伊勢次を見送りながら、喜六郎は人の好さそうな四角い顔に笑みを浮かべたのである。

