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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第15章 第六話 【春の雨】 其の弐

お彩は、ひたすら我が身を責めた。
「止めて、お願いだから、止めて―!!」
お彩は声を限りに叫んだ。
それを合図とするかのように、二人の男のどちらからともなく手を放した。陽太がまずドサリと地面に倒れ込み、次いで伊勢次がその傍らに大の字に倒れた。
お彩は、地面に伸びた蛙のような二人の姿を茫然と眺めているしかなかった。陽太の傍にすぐにでも駆け寄りたかったけれど、自分のためにここまでの喧嘩をしてのけた伊勢次の心中を思えば、それはできかねた。
その時。
お彩の頬に冷たいものが触れた。お彩が弾かれたように見上げると、いつしかあれほど輝いていた日輪はいずこかへ姿を隠し、鈍色の雲が幾重にも低く江戸の空を覆い尽くしていた。灰色の空から雨の雫が落ち始めていた。
「止めて、お願いだから、止めて―!!」
お彩は声を限りに叫んだ。
それを合図とするかのように、二人の男のどちらからともなく手を放した。陽太がまずドサリと地面に倒れ込み、次いで伊勢次がその傍らに大の字に倒れた。
お彩は、地面に伸びた蛙のような二人の姿を茫然と眺めているしかなかった。陽太の傍にすぐにでも駆け寄りたかったけれど、自分のためにここまでの喧嘩をしてのけた伊勢次の心中を思えば、それはできかねた。
その時。
お彩の頬に冷たいものが触れた。お彩が弾かれたように見上げると、いつしかあれほど輝いていた日輪はいずこかへ姿を隠し、鈍色の雲が幾重にも低く江戸の空を覆い尽くしていた。灰色の空から雨の雫が落ち始めていた。

