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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第16章 第七話 【雪花】 其の壱

その馴染みの古着屋には中年増の艶な女主人がいて、いつも紫の着物に黒襦子の帯をきりりと締めていた。もうおっつけ三十にはなるだろうが、華やかな美貌である。若い時分に亭主に先だだれたとかで、今は独りでひっそりと店を守っていた。この女主人とお彩は顔なじみであり、今日は父伊八のための半纏を求めにいったのだ。
この冬の寒さは格別だ。十二月がこの寒さであれば、年が明けての一月、二月、いわゆる厳寒と呼ばれる時季はなおのこと寒さがこたえるに相違ない。腕の良い飾り職人である父伊八はまだ四十一だが、それでも、殊の外の寒さはそろそろ身に滲みるのではないか。お彩は三年前に家を出て、現在は父の住む甚平店からほど近い長屋で一人暮らしをしている。
この冬の寒さは格別だ。十二月がこの寒さであれば、年が明けての一月、二月、いわゆる厳寒と呼ばれる時季はなおのこと寒さがこたえるに相違ない。腕の良い飾り職人である父伊八はまだ四十一だが、それでも、殊の外の寒さはそろそろ身に滲みるのではないか。お彩は三年前に家を出て、現在は父の住む甚平店からほど近い長屋で一人暮らしをしている。

