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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第16章 第七話 【雪花】 其の壱

そうなのだ、お彩は改めて思った。京屋は江戸でも名を馳せた呉服問屋で、お彩なぞ、その日暮らしの貧乏人に手が届くような品は置いてはいない。お彩のような娘が京屋の前をうろついていただけで、店の者からこんな眼で見られるのも致し方のないところもあった。
手代はお彩と歳が違わぬようであった。その手代の無遠慮な視線から逃れるように、お彩は大急ぎで京屋の前から離れた。ふらふらとまるで糸の切れた凧のように力ない足取りで歩んでいる中に、向こうから物凄い勢いで走ってきた大八車にぶつかりそうになる。
「馬鹿野郎ッ」
大八車を引いていた大男が怒鳴った。
「こんな昼日中から一体、どこに眼付けて歩いてやがるんだ。そんなに死にてえのなら、とっとと別の場所に行って他人さまの迷惑にならねえように死にやがれ」
手代はお彩と歳が違わぬようであった。その手代の無遠慮な視線から逃れるように、お彩は大急ぎで京屋の前から離れた。ふらふらとまるで糸の切れた凧のように力ない足取りで歩んでいる中に、向こうから物凄い勢いで走ってきた大八車にぶつかりそうになる。
「馬鹿野郎ッ」
大八車を引いていた大男が怒鳴った。
「こんな昼日中から一体、どこに眼付けて歩いてやがるんだ。そんなに死にてえのなら、とっとと別の場所に行って他人さまの迷惑にならねえように死にやがれ」

