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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第16章 第七話 【雪花】 其の壱

京屋といえば、江戸でも名の通った老舗にして大店だ。お彩もこの前を通ったことは何度もある。まさか、陽太がこんな近くにいたとは想像だにしていなかった。
それにしても、陽太がなにゆえ、こんな場所にいるのだろうか。お彩は考え、ふと自分のそんな想いが馬鹿げたものだと自分で自分を嘲笑った。見送りに出た番頭や手代の慇懃な態度からも判るように、陽太は他ならぬ「京屋」の主人だったのだ! それも、京屋の主人市兵衛といえば、お彩のような商売人にはとんと拘わりのない娘でさえ、やり手の商人として同業者から一目置かれている存在だと知っている。
あの陽太の正体が「凄腕」と評される京屋市兵衛だったとは。まるで魂を抜かれたようにボウと店の前に立ち尽くすお彩を、店の中から先ほどの手代がいかにもうさなんくさげな眼で眺めていた。
それにしても、陽太がなにゆえ、こんな場所にいるのだろうか。お彩は考え、ふと自分のそんな想いが馬鹿げたものだと自分で自分を嘲笑った。見送りに出た番頭や手代の慇懃な態度からも判るように、陽太は他ならぬ「京屋」の主人だったのだ! それも、京屋の主人市兵衛といえば、お彩のような商売人にはとんと拘わりのない娘でさえ、やり手の商人として同業者から一目置かれている存在だと知っている。
あの陽太の正体が「凄腕」と評される京屋市兵衛だったとは。まるで魂を抜かれたようにボウと店の前に立ち尽くすお彩を、店の中から先ほどの手代がいかにもうさなんくさげな眼で眺めていた。

